神奈川県(その2)慰霊碑一覧・参拝記録
 神奈川県鎌倉市
神雷戦士之碑 (建長寺)
建立場所
 神奈川県鎌倉市山ノ内8 建長寺

趣旨
 特攻兵器「桜花」部隊であった第721航空隊、第722航空隊(別称神雷部隊)の英霊をまつる
 建長寺正統院の山門左側の洞窟内に、海軍神雷部隊戦没者芳名の碑板が設置されている。

 碑文
 【神雷戦士之碑】
 昭和16年12月8日、わが国は米国及ぶ英国に対し戦を宣し太平洋戦争に突入した。 緒戦においては、中部太平洋から印度洋に至る広大な地域で嚇々たる戦果を挙げたが、昭和18年に入るや連合軍の反抗態勢は次第にわが国の防衛線を圧迫し、遂に昭和19年には内太平洋の要衝を占領され、遠からず日本本土での決戦が予想される深刻な事態となった。
 当時、わが国は戦争遂行に必要な資源も漸く枯渇してきたばかりでなく、人材の喪失によって部隊の練度も逐次低下をきたしていたのに反し、米軍は航空母艦を基幹とする大機動部隊を擁し、上陸作戦用艦艇を益々増強されつつあった。
 わが海軍は、このような劣勢を挽回するため通常兵器の増強を図る一方、苦悩の末、一人克く一艦、一船を屠るため、必死の水中、水上、航空各種特攻へ行きを採用し、夫々部隊を編成した。
 航空にあっては、桜花一一型を採用し、19年8月全海軍航空隊から、その操縦士を極秘裡に募集、同年10月、作戦部隊として第721海軍航空隊を新編した。本航空隊は、神雷部隊の別称を持ち、桜花隊とその懸吊母機一式陸上攻撃機、これを援護する零式艦上戦斗機の各飛行隊の他これと連帯して作戦する彗星艦上爆撃機隊、及び地上部隊によって構成され、その作戦の成否は、祖国の命運を左右するものとして期待された。
 神雷部隊は、連合艦隊直率のもと、当初比島方面作戦に使用される予定であったが、その機会を失し、後に西日本防衛のため編成された第5航空艦隊の麾下として、20年3月、九州方面に来襲した敵機動部隊に対し第1回神雷桜花攻撃を敢行した。爾後沖縄攻防戦から終戦に至るまで、爆装零戦特攻機と共に、神雷桜花攻撃を反復実施し、その壮絶な戦法は、米国将兵を戦慄させた。
 この神雷戦士の碑は、祖国の為、又同胞の為、一身の犠牲を顧みず、敢然として死地に赴いた至純、至高の若者達への鎮魂の碑である。
  昭和40年3月21日 建立
    第一次桜花攻撃20周年記念
  平成5年10月1日 改修
    神雷部隊結成49周年記念
  海軍神雷部隊戦友会
 【あゝ 火箭の神々】 神雷特攻隊を讃う 火野葦兵  昭和20年6月5日

 水ぬるみ、菜種は黄に、 麦やや青きころ、 虹の門を開きて、 神雷特別攻撃隊出撃す。 穹をさく光芒火箭となって、
 敵艦のふところに炸裂すれば、 一瞬、 銀の水柱天心つき、 海洋は敵の墓場となり、 海洋は我に花園となる。
 げに神の雷はすさまじくも美し。

 私は忘れることができない。 特攻基地に雲雀は鳴いていた。 若々しく端正のの面立、 すみきった無垢のまなざし、
 あどけなく綻びるくれなゐの唇、 腕と額とに鏤められた日の丸、 夜光時計をささへる鮮やかな朱の紐、
 名の記された飴色の半靴と、 兜に似た飛行帽と、 目釘青くしめった太刀の落としざし、 そはまことその昔の日の、
 緋縅の鎧凛々しい若武者の出陣の姿。 しかもこれら紅顔の若人たちは、 ひとたび出撃してゆけば、
 たれ一人還って来なかった。

 汚濁にみちた地球のうへ、 ひとり燦然たるは日本民族、 その血脈の凝りてふきいでたるもの、 神々の伝承を瞬間に顕現し、
 神話の規模を一撃に圧縮し、 生もなく死もなく、 誇りと愛と怒りとをこめ、 奔放溌剌に散りて咲く兵隊の花。 
 剣に篝火の赤きを映し、 一献の土器に寡黙の別離をこめて、 歴史の海原へただ殺到してゆくもの、 科学を超ゆる魂の飛翔、
 青春こそ國を護るものと、 その生命をもって示しつつ、 天の舞楽となって、 紺碧の太平洋に、  莞爾たる勝鬨の声をあげるもの。
 ああ神雷特別攻撃隊

 ふっくらと柔かく暖き機腹に、 そっと抱かれ、 その身爆弾でありながら、 残照に宝石のごとく光り、 親飛行機の愛撫をわすれかねる。
 凛冽の闘魂をもって、 突入の寸前まで熟睡し、 戦友の遺骨を胸にいだいて、 嗤ふべき目標に会心の笑みをうかべ、 噴射推進の魔法に乗って、
 壮麗の攻撃を開始する。 碧眼獣心の夷ども茫然たるなかに、 神の雷落下して、 海洋は轟然たる花園となり、
 かくて鉄屑はさらに海底に堆積された。

 強きものも、 悲しきものも、 美しきものも一つとなる日、 虹の門はわれらの前に立っている。 沖縄戦場に凄愴の血闘つづけられ、
 本土新戦場となって、 いまわれら硝煙の巷に立つ日、 瞼と心に灼きつくものに追従しよう。
 特攻隊は国民を叱咤しない。 大らかな青春の愛情をこめて、 静かにわれらのゆく最後の道を示している。
 沈着と怒りと誇りとをもって、 なほも、日夜、 滅敵の道をゆく火箭の神々、
 ああ神雷特別攻撃隊
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